休暇 |
|
![]() |
|
| 寸評 | 主人公の心に去来する、人命を奪ったという呵責。たとえそれが仕事であったとしても、死にゆく受刑者の断末魔の痙攣や体温の感触は決して消えない記憶となって彼に付きまとう。映画は、刑務官の心理を通じて、命の重さを問う。 |
| ポイント | ★★★ |
| DATE | 08/6/25 |
| THEATER | THYK |
| 監督 | 門井肇 |
| ナンバー | 152 |
| 出演 | 小林薫/西島秀俊/大塚寧々/大杉漣 |
| 批評 | ネタばれ注意! 結末に触れています 家族水入らずの旅に出かけたのに、どこか浮かない顔の男。荷物を降ろす音に怯え、妻と距離をとってしまい、子どもとの間もどこかぎこちない。男の心に去来する、人命を奪ったことに手を貸したという呵責。たとえそれが仕事であったとしても、死にゆく受刑者の断末魔の痙攣や体温の感触は決して消えない記憶となって彼に付きまとう。映画は、合法的な殺人が認められた現場に立ち会う人びとの心理を通じて、命の重さを問う。 拘置所の刑務官・平井は週末に結婚を控えた金曜日に金田という服役囚の死刑執行に立ち会うことで、翌週1週間の休暇を得て新婚旅行に出る。金田はスケッチを好み、運命を受け入れているかのような物静けさで、決して平井の手を煩わせることはなかった。 平井の披露宴をしらけた雰囲気が覆う。酔っ払ったオッサンが平井の職業を正義の味方のように褒め上げるが、金田の死を看取った翌日だけに、平井も招待された刑務官たちも誰一人口を開こうとせず料理に口をつけない。理性では割り切れない、黒々とした靄のような感情。それに押しつぶされそうになりながらも粛々と通常業務と日常生活をこなさなければならない。いかに法で定められた刑といえども、直接手を下す立場の人間には他人にはうかがい知れないほど大きな不快さを残すという事実がリアルに描かれる。 旅先の旅館で、職務内容を妻に話せないことから「関心がないんでしょ」と問い詰められる平井が哀れだ。喜怒哀楽を抑えて生きるようになってしまった平井の胸中を新婚の妻は理解しない。まして、休暇が死刑囚の「支え役」といういちばん嫌がられる役目の褒美とはとても言い出せない。物語は時間軸をずらし、平井が直面する死刑という禁忌と結婚という祝福を並行させることで、法制度そのものに対する鋭い疑問いを放つ。賛成でも反対でもなく、ただ冷徹な視線で登場人物を観察し、死者に対しては等しく冥福を祈るというスタンスに好感が持てた。 [http://www.otello.com.ua/:title=↓その他の上映中作品はこちらから↓] |