らくだの涙 |
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| 寸評 | らくだ親子の断絶というハプニングが、完成度の高いドラマとしても感動を呼ぶ。シナリオがあるわけでもなく、演技しているのでもない。それだけにカメラの前で繰り広げられる愛の再生は、深くそして静かに心に染み込んでくる。 |
| ポイント | ★★★★ |
| DATE | 04/9/1 |
| THEATER | BUNKAMURAル・シネマ |
| 監督 | ビャンバスレン・ダバー/ルイジ・ファロルニ |
| ナンバー | 102 |
| 出演 | オーガンバータル・イフバヤル/オドゲレル・アユーシ |
| 批評 | ネタばれ注意! 結末に触れています はるか大草原で繰り広げられるらくだの出産、自然や家畜と一体となったモンゴルの人々の素朴な暮らしというテーマだけならありふれたドキュメンタリーの域を出なかっただろう。ところが、らくだ親子の断絶と受容というハプニングが壮大なテーマを呼び込み、完成度が高いドラマとしても感動を呼ぶ。シナリオがあるわけでもなく、演技しているのでもない。それだけにカメラの前で繰り広げられる愛の再生は、深くそして静かに心に染み込んでくる。 ゴビ砂漠に住む遊牧民一家。らくだやひつじといった家畜と共に質素な生活を営んでいる。春の出産シーズン、白いらくだを出産した母らくだが、自分の子を受け入れずに母乳を与えようとしない。飼い主の一家は子らくだの体力を心配し、母らくだの心を癒そうとする。しかし、母らくだは白いわが子を拒絶する。思い余った飼い主の家族は、はるか離れた街までらくだの気持ちに安寧をもたらすという馬頭琴奏者を呼びに行き、伝統的な歌と調べを奏でる。 らくだの生態についてはよく知らない。茶色のらくだが白い子を産んだり、母らくだが自分の子に乳を与えないというのもそう珍しいことではないのかもしれない。馬頭琴奏者が生み出す旋律がらくだ親子を融和させるというセラピー術が確立しているところを見ると、モンゴルではありふれた光景なのだろう。馬頭琴をらくだのコブに引っ掛け、最初は風まかせの音をらくだに聞かせる。その後、哀切あふれるメロディと腹の底から搾り出すような歌声を母らくだの耳に届けるのだ。母らくだは涙を流し、子らくだに乳を与える。 すべてはこの母子和解のシーンに収斂されていくのだが、これが壮大な命と愛のドラマとしてみごとに昇華されている。母に嫌われた子はどんな気持ちだったのだろう。母はなぜ白いわが子を嫌ったのだろう。そして、音楽セラピーの末に目にいっぱい涙をためた母らくだ。こうした一連のエピソードを、どうしても人間の世界にあてはめてしまう。らくだ親子を擬人化せず、観客の想像力に任せたところがとても好感が持てた。 |