こんな映画は見ちゃいけない!

ミラーを拭く男

ミラーを拭く男
寸評 言葉にすると陳腐になってしまうことがある。言葉にしないと伝わらないこともある。主人公は「あ〜」「う〜」「いや〜」の3語しか発しない。しかし、それだけでは犬の気持ちがわかる程度にしか主人公の気持ちは伝わってこない。
ポイント ★★*
DATE 04/8/25
THEATER テアトル池袋
監督 梶田征則
ナンバー 99
出演 緒形拳/栗原小巻/辺土名一茶/国仲涼子
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

言葉にすると陳腐になってしまうことがある。言葉にしないと伝わらないこともある。緒方拳扮する主人公は「あ〜」「う〜」「いや〜」の3語しか発しない。それだけの言葉で「もう、うっとうしいな〜」「オレのことほうっておいてくれ」「ありがたいけど、これ以上かまわないでくれ」「そういわれても、俺は困るんだけど」などの気持ちを表現する。しかし、やはりそれだけでは犬の気持ちがわかる程度にしか、主人公の気持ちは伝わってこない。

定年間近のサラリーマン・皆川は、交通事故を起こしたことから家族に黙って会社を辞め、街のカーブミラーを磨き始める。やがて家族とも溝ができた皆川はひとり北海道に旅立ち、北海道から順に日本中のカーブミラーを磨く旅を始める。自転車に脚立を積みテントに寝泊りする。地図を塗りつぶしながらペダルをこぎ、ひとつひとつカーブミラーをぴかぴかに磨き上げる皆川の誇らしげな表情がいい。

皆川のセリフ極限まで減らし、緒方拳に表情だけの演技をさせるという実験はあまり成功しているとはいいがたい。皆川のそのときの気持ちは理解できるのだが、家族ですら彼の人となりを語らないので、どんな男かまったく伝わって来ない。無口だが行動力はある。ミラーを磨くことに喜びを感じているというだけでは、定年近くまで会社勤めをしてきた人間にしてはあまりにも寂しい人生ではないだろうか。ミラー磨きを始めた直接のきっかけは交通事故だろう。しかし、極端な行動に至るまでの鬱屈した思いがまったく省かれているために、この主人公はただの変人にしか見えない。

皆川の行動がやがて世間の知るところとなり、老人によるカーブミラー磨きは一大ムーブメントになる。そんな様子を皆川は冷めた目で見ている。皆川にとってミラー磨きは、ただ自分がやりたいからやっているだけ。そこに世間に何かを訴えたいなどという大きな願望はない。だからこそ夫の行動に理解を示した妻が合流するというラストではなく、最後の最後まで孤高を貫き通して欲しかった。