こんな映画は見ちゃいけない!

天国の青い蝶 THE BLUE BUTTERFLY

天国の青い蝶
寸評 夢は夢だからこそ魅力的なのだ。それは手に入れたとたんに輝きを失う。しかし、夢の象徴としての青い蝶に神秘性がないのだ。人の心を惑わすような妖しさがなければ、ジャングルにまではるばる行った甲斐がないではないか。
ポイント ★★
DATE 04/8/14
THEATER シネスイッチ銀座
監督 レア・プール
ナンバー 93
出演 ウィリアム・ハート/マーク・ドネイト/パスカル・ブシェール/ラオール・トゥルヒロ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

夢は夢だからこそ魅力的なのだ。それは手に入れたとたんに輝きを失う。余命いくばくもない少年が最後の夢を叶えようと命の炎を燃やす、というような題材はお涙ちょうだいてきな作品にすることはいくらでも可能だっただろう。しかし、実話に基づいているという縛りゆえ自由な改変ができなかったのか、物語としてとても物足りない。なにより夢の象徴としての青い蝶に神秘性がないのだ。昆虫学者がテレビで口にするような人の心を惑わすような妖しさを持っていなければ、少年がジャングルにまではるばる来た甲斐がないではないか。

脳腫瘍であとわずかの命と宣告されたピートは、ジャングルの青い蝶を自分の手で捕まえたいと言う最後の夢を実現させるため昆虫学者・アランのもとを訪れる。アランはピートの熱意に打たれ、ピートの母・テレサとともにピートをジャングルの奥地に連れて行く。そして連日ピートを担いでジャングルの中で青い蝶を探し回る。

少年の最後の願いを実現させてやりたいと思ううちに、周りの大人たちも少年の情熱に打たれて変わっていく、というのがこういう作品の定石だ。しかし、ピートの熱意は前半、彼の部屋を訪れたときにアランが目にする標本の数々だけだ。ピートは本来、昆虫オタクであるべきなのに、アランに話すことと言えば青い蝶の夢などではなくアランの娘への思いや母親の恋の心配だったりする。なぜこのジャングルへの道行きの過程でピートに昆虫の薀蓄をもっと語らせなかったのか。アランがそれに答えているうちにピートと心も結ばれる、という展開にしなければ感情的な盛り上がりに欠ける。

結局、青い蝶を捕まえる寸前で洞窟に落ちアランはけがをして動けなくなる。命がけでピートは助けを呼びに行く。ところが救出後に原住民の娘にかごに入った青い蝶をもらうのだ。手に入れる寸前で逃げていった夢。そのおかげで青い蝶とは別の生きる意義を知ったと思ったのに、もらうというあまりにも安易な方法で夢を手に入れてしまう。もちろんピートはそんな夢をすぐに放してしまう。その後、ピートの病気も治ってしまい、それを奇跡の一言で片付けてしまう。確かに実話かもしれないが、その奇跡に肉付けしていくのが映画作家の仕事だろう。それを怠っていては何のために映画にしたのかその異議が疑われる。