こんな映画は見ちゃいけない!

MUSA 武士

MUSA 武士
寸評 登場人物をそれぞれ血の通ったキャラクターとして描かれているし、戦闘シーンをリアルな迫力で満たそうという努力も十分伝わってくる。しかし、それらをすべて詰め込もうとしたため、かえってテーマがぼやけてしまった。
ポイント ★★★
DATE 03/12/15
THEATER シネマスクエアとうきゅう
監督 キム・ソンス
ナンバー 156
出演 チョン・ウソン/チュ・ジンモ/アン・ソンギ/チャン・ツィイー
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

戦闘シーンは迫力があり、肉を斬り骨を断つような実感が伝わってくる。しかしその描き方がワンパターンで、何度も出てくる合戦シーンも最後のころには食傷気味になる。カメラワークに工夫がないし、色彩も同じ。たとえば砂漠での戦闘では黄色、林の中での戦闘は緑、最後の篭城戦では赤などとテーマとなるカラーを決めてその色を強調するような撮影をするとか、同じく戦闘シーンでカメラを引いての長回しと手持ちカメラで走り回るとか。「撮影上のテーマ」を決めていないために戦闘シーンでいくら生身の俳優たちが迫力のある殺陣を演じても平板な印象しか持てない。

物語は元末明初の中国、南京に到着した高麗の使節団が裏切りの汚名を着せられ明の官吏に囚われる。護送中に元の残党に襲われ自由になるが、明の役人に追われる羽目になる。逃亡中に元軍の捕虜となっている明の姫を救ったことから、今度は元軍にも追われる。敵陣真っ只中、味方の援護もなくさらに漢の民間人まで一行に加わった高麗の使節団は追っ手と戦いながら必死の逃避行を続ける。

こういう状況におかれた場合「ティアーズ・オブ・ザ・サン」を持ち出すまでもなく、指揮官の命令の下、兵士は心をひとつにして使命に当たらねばならない。だが、この高麗使節団を護衛する龍虎軍の指揮官であるチェ将軍は若くまだ部下の気持ちをつかんでいない。それどころか功を急ぐあまり非情な命令を下し、次第に部下の心が離れていく。奴隷上がりのヨソルはその圧倒的な槍の腕で次第に仲間の信頼を得ていく。また思慮深い老兵のチンや漢人の難民を「わが民」と呼びながらも平気で輿にふんぞり返っている明の姫など、人物描写が結構細かく行き届いている。武人といっても腕が立つだけでは人の心を動かせないし、高貴な身分というだけでは非常時には何の役にも立たない。こうした状況下では知恵と経験に裏付けられた勇気と行動力こそが自分と仲間を救うことをこの作品は教えてくれる。

主要な登場人物をそれぞれ血の通ったキャラクターとして描こうとする意図は分かる。戦闘シーンをリアルな迫力で満たそうという努力も十分伝わってくる。しかし、それらをすべて詰め込もうとせず、もう少しテーマを明確にして不要なシーンをばっさりと切る勇気を持たなければ、かえってテーマがぼやけてしまうというのだ。