こんな映画は見ちゃいけない!

女はみんな生きている CHAOS

寸評 逆襲する痛快さ、復讐する爽快さ。男たちに虐げられてきた女たちが意を決して男たちの支配に挑む。洗練されたエスプリと因果応報のアイロニー、そしてスピーディで歯切れのよい展開が一体となった今年いちばんの傑作だ。
ポイント ★★★★*
DATE 03/11/27
THEATER シネスイッチ銀座
監督 コリーヌ・セロー
ナンバー 150
出演 カトリーヌ・フロ/ヴァンサン/ランドン/ラシダ・ブラクニ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

逆襲する痛快さ、復讐する爽快さ。男たちに虐げられてきた女たちが決意して男たちの支配に挑む。主婦はワガママな夫と息子に対して宣戦布告し、売春婦は自分を搾取した組織に全面報復する。その過程が歯切れよくエピソードもきれいに整理されている上、テンポのよい音楽と共に展開が予想できないワクワク感とちょっと危険な罠を仕掛けたりするドキドキ感、さらに少しコミカルな味付けが抜群の相乗効果をもたらしていっときも退屈させない。

夫と車で外出したエレーヌは娼婦が袋叩きにされる現場に出会うが、夫は係わり合いを避けて何もしない。翌日、罪の意識にかられたエレーヌは娼婦が入院中の病院を突き止め、彼女が回復するまで看病する。やがて回復した娼婦・ノエミは組織から依然狙われ、エレーヌはノエミをつれて逃亡する。ノエミは莫大な遺産を隠し持っていて、そのカネを組織が狙っているのだ。

エレーヌを取り巻く環境がディテールまで描きこまれていて、夫と息子に対して感情を爆発させる過程にリアリティがある。ただ、少しかまって欲しいだけ、少し家事を手伝って欲しいだけなのに、夫も息子もまったく彼女のことを家政婦ぐらいにしか思っていない。夫が、鬱陶しく思っている母親が尋ねてきた時に居留守を使うと、そのすぐあとにエレーヌが息子を訪ねると居留守を使われるという、父子で母親に対して同じ事をするという奇妙な遺伝が笑わせる。それだけではなく、女を物扱いしかしない態度がことごとく父子でそっくりなのだ。ノエミまた同じような環境で育った上、売春組織に食い物にされるという悲惨な過去を持つ。

エレーヌとノエミはスイスに逃れ、そこで男たちへの復讐の算段をする。そのあたりから今度はスリラーの要素も加わり、物語は加速する。ノエミは抜群の行動力とエレーヌの協力で売春組織を壊滅させることに成功する。さらにはエレーヌの協力への謝礼として、エレーヌの夫と息子を同時に篭絡するという念の入れよう。洗練されたエスプリと因果応報のアイロニー、そしてスピーディな展開が一体となった傑作だ。