こんな映画は見ちゃいけない!

ラスト・サムライ THE LAST SAMURAI

ラスト・サムライ
寸評 人の一生は、どう死んだかではなくどう生きたかでその価値が決まる。トム・クルーズは武士道を語ることで、美学を持った生き方を貫くことは容易ではないが、日本政府と日本人にもっと自分たちの生き方を主張せよ、という強力なメッセージを送る。
ポイント ★★★★
DATE 03/11/22
THEATER 109シネマズ港北
監督 エドワード・ズウィック
ナンバー 147
出演 トム・クルーズ/渡辺謙/真田広之/小雪
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

滅びの美学だ。失われつつある武士道精神を最後まで全うしようとする男と、アメリカ人士官の友情。日本人にその精神を伝えることがかなわなかった最後の侍がアメリカ人に後を託す。古来から守られてきたモノや精神が新しい波に飲み込まれるときには、常に最後の輝きを放つように、小銃、大砲、機関銃と近代化された装備の正規軍に刀と弓矢だけで立ち向かう侍たちの姿は美しい。

ネイサンという米陸軍大尉が日本陸軍の近代化のために明治政府に招かれ来日する。しかし、朝敵である勝元に捕らえられ、勝元の元で軟禁生活を送るうちに武士道の真髄を知り、次第に勝元に惹かれていく。やがてネイサンは明治政府を裏切って勝元とともに戦う決意をする。

ネイサンもまた武士道に通じる精神の持ち主だ。インディアン討伐で無抵抗の非戦闘員まで虐殺したことを非常に悔いている。その結果酒びたりの日々を送っていたが、勝元と配下の日本人たちと触れ合ううちに自分の精神を浄化させるのだ。死ぬべきときに死ねず死に場所を探していたネイサンには、武士道の精神に殉じる勝元の戦いこそ自分の死を飾るにふさわしいと思ったのだろう。ネイサンの目に映った日本人は「いかに武士らしく死ぬか」を常に考え、名誉ある死を遂げるために日々の生活を大切にして生きる人々だ。ネイサンはその考え方を奇異に感じキリスト教的観点から同意はできないものの、異文化に対する尊厳は覚える。そのあたりのスタンスが西洋と日本の文化どちらに偏りすぎることもなくバランスが取れている。

天皇に勝元の死に様を問われたネイサンは、勝元の死より勝元が生きたかを語ろうとする。どう死んだかよりどう生きたか。ネイサンの言葉は最後の侍=勝元亡き後の日本人すべてに対するメッセージだ。人の死はその人の生き方を語るのと同じことであると、天皇を代表とするすべての日本人に教えてくれる。つまりこの作品は、外交問題をすべて米国の言いなりになっている日本政府と国民に対する叱咤激励し、もっと自分たちの生き方を主張せよというトム・クルーズからの強力なメッセージなのだ。