こんな映画は見ちゃいけない!

天使の肌 PEAU D'ANGE

天使の肌
寸評 少女の肩に乗ったカモが広げた翼を静かに閉じるという、天使が舞い降りたようなファーストシーンの詩的な美しさに心が躍った。ヴァンサン・ペレーズの演出は抑制と省略が静かなハーモニーを奏で、切ない愛の物語に静かな躍動感をもたらす。
ポイント ★★★★
DATE 03/10/31
THEATER 新宿武蔵野館
監督 ヴァンサン・ペレーズ
ナンバー 136
出演 モルガーヌ・モレ/ギョーム・ドパルデュー/マガリ・ヴォック/カリーヌ・シラ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

少女の肩に乗ったカモが広げた翼を静かに閉じるファーストシーン。そのシルエットはまるで天使が舞い降りたようだ。この美しくファンタスティックなショットだけで物語の中に引き込まれてしまう。ヴァンサン・ペレーズの演出は抑制と省略が静かなハーモニーを奏で、切ない愛の物語に静かな躍動感をもたらす。

農家の娘・アンジェルは口減らしのために金持ちの屋敷に奉公に出される。家政婦として働く日々である日、グレゴワールという青年と出会い、一夜を共にする。グレゴワールすぐに姿を消すが、彼に金のペンダントをもらったアンジェルはその出会いを一生に一度の恋と思い込む。グレゴワールを探して街に出たアンジェルだが、彼の手がかりを見つけたと思ったら殺人事件に巻き込まれ刑務所に入れられてしまう。

アンジェルの目は雄弁だ。自分の思い通りにならない人生に流されながらも、たった一度寝ただけの男への思いを捨てず、その強い意志だけは瞳に宿している。17歳の彼女はまったく無力で、運命に逆らえない。誤認逮捕であるにもかかわらず何の抵抗も示さない。それでも彼女の瞳の力は決して衰えない。一方のグレゴワールは母の葬式も途中で投げ出すような男なのに、社会では要領よく生きている。愛ゆえに不器用に生きる女と、愛なきゆえに器用に生きる男の対比が抑えたタッチながらも鮮やかだ。

無実が判明し出所したあともアンジェルはすぐ隣の修道院で暮らす。刑務所内の生活と変わらず質素で単調な毎日。花を植え、育て、咲かせる。季節が巡り、彼女は突然死ぬ。それでも彼女が咲かせた花は刑務所の囚人に生きる希望を与えた。彼女の思いはグレゴワールに人を愛する気持ちを取り戻させた。たった17年の切なくはかない人生だったけれど、地上に降りた天使としての仕事を全うしたのだ。