HERO 英雄 |
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| 寸評 | 原色を強調した映像の中では、秦王の黒ですら鮮やかな印象を残す。そこで繰り広げられる武術の数々。鍛え上げられた技に特撮とCGを加えることで相乗効果を生み、さらに細密なカメラワークで抜群の視覚効果を生む。 |
| ポイント | ★★★★ |
| DATE | 03/8/18 |
| THEATER | 池袋東急 |
| 監督 | チャン・イーモウ |
| ナンバー | 103 |
| 出演 | ジェット・リー/トニー・レオン/チャン・ツィイー/マギー・チャン |
| 批評 | ネタばれ注意! 結末に触れています 美しい。赤、黄、緑、青といった原色を強調した映像の中では、秦王ならびに彼の軍のカラーである黒ですら鮮やかな印象を残す。そのカラーの中で繰り広げられる武術の数々。鍛え上げられた技にワイヤーアクションとCGを加えることで相乗効果を生み、さらに細密なカメラワークで抜群の視覚効果を生む。さらに琴や太鼓といった中国的なサウンドを武術シーン取り入れることで、チャン・イーモウ独特の世界を醸し出している。 秦王の命を狙う3人の刺客を討ち取ったことで謁見を許された無名という剣客。彼がいかにして3人倒したかを秦王に語ることから物語は始まる。槍使いの長空、書道が剣の道に通じるという残剣と彼の恋人の飛雪。特に残剣は書道を通じて万物の真理を究めようとする哲学者のようだ。この3人どういう人間で、彼らと戦うときにどのような技を用いたか、という語りのなかで繰り広げられる武闘シーンがこの作品の見せどころだ。 特に無名と長空の戦いのシーンは見ごたえがある。降りそぼる雨の中、盲目の老人が奏でる琴の音色とともに2人の男が干戈を交える。ワイヤーの使い方も控えめで、2人の剣さばき槍さばきが十分に堪能できる。また、秦王が弓矢を用いて攻撃するシーン。無数の黒い矢が天を覆い尽くし、集中豪雨のごとく降り注ぐ。その他、グリーンを基調にした残剣と秦王の戦いのシーンなど、清明なカメラがとらえた計算され尽くされた映像の美学はそれだけで心躍る体験だ。 最後に、無名のウソが秦王に喝破された時、残剣こそ秦王の意図を理解するただ一人の人間だということが判明する。刺客たちは「天下」を見据えて戦乱の世を早く治めることを秦王に託し、そのためには自分の命など進んで投げ出す。そういう中国人独特の義侠心は理解しがたいところもあるが、自分の命より天下の安寧を願う心こそ名だたる刺客たる所以なのだ。刺客たちはみな、ただ殺しのための技術として武術を体得したのではなく、武術を通じて人生や天下国家を見据えている。特に残剣は書の道は剣の道に通じるとして、文字に宿る力や哲学のようなものを信じている。このあたりの東洋的な精神主義は人生そのものに通じる考え方だ。中国の歴史の深さと思想の奥行きを感じさせられる作品だった。 |