こんな映画は見ちゃいけない!

春の惑い 小城之春

春の惑い
寸評 親友の妻はかつての恋人だった。上海から帰郷した医師はかつての思いを胸によみがえらせ、夫とうまくいっていない女は彼の決心を待っている・・・。よくある三角関係だが、濃密な映像の中に大人の分別を感じさせる。
ポイント ★★★
DATE 03/5/20
THEATER BUNKAMURAル・シネマ
監督 田壮壮
ナンバー 66
出演 辛柏青/呉軍/フー・ジンファン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

日中戦争終結直後の蘇州、医師と彼の幼馴染の友人、友人の妻をめぐっての三角関係を、濃密でしっとりとした映像で描く。そこに流れる空気は、二人の男とひとりの女の間柄を象徴するように、華やかだが重い。唯一、恋にも人生にも無邪気でいられる16歳の妹の存在だけが作品に明るさを与えている。

上海帰りの医師・チーチェンは親友のリーイェンを訪ねる。そこでは、かつての恋人・ユイウェンがリーイェンの妻となっていた。男同士は旧交を温めあう一方で、ユイウェンは密かにチーチェンの部屋に通う。夫婦仲がうまくいっていないのを知ったチーチェンはユイウェンへの思いを募らせる。ユイウェンもチーチェンが今の生活から救ってくれると思い始める。

この作品中、登場人物が一番饒舌になるのは妹の誕生日祝いのシーンだ。チーチェン、ユイウェン、リーイェン、そしてリーウェンの妹の4人が一同に会し、食事を共にする。最初は男同士も無邪気にゲームを楽しんでいたが、やがて酒が入るとユイウェンも参加する。そしてチーチェンとあまりにも楽しげにゲームに興ずるのを、リーイェンは切ない思いで見つめる。夫である自分に対しては見せることのない笑顔をユイウェンはチーチェンには見せる。嫉妬なのか、自分の至らなさに対する情けなさからなのか、リーウェンはそっと部屋を抜け出し、ひとり庭で涙に暮れる。カメラワークがすばらしく、パーティからひとり疎外されたリーイェンの心理、そして酒に酔ったという言い訳の元に抑えてきた自分たちの気持ちを開放するチーチェンとユイウェンの心境を見事に表現していた。

結局、チーチェンとユイウェンは煮え切らない。だが、煮え切らない分別こそ大人の映画にはふさわしい。